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書式を知ろう「示談書」<応用編>

この「書式を知ろう」シリーズでは、交通事故の被害者になってしまった方の「事故発生〜示談」に焦点を絞り、解決までの流れと、各段階で必要になる重要書類について説明します。

今回は示談書作成の応用編です。

【交通事故発生から解決までの流れ】

1.交通事故発生
まずは警察に通報します。その後警察により、実況見分調書が作成されます。
事故が発生した事実を後日警察が証明してくれる書類として、交通事故証明書があります。
2.けがの治療〜症状固定
症状固定とは、これ以上治療を続けても大幅な改善が見込めなくなった段階と指します。症状固定をしたら、事故で負った後遺症に関する診断書を作成してもらいます。
3.保険会社へ損害額等の支払い請求〜示談交渉
後遺障害診断書をもとに、保険会社へ自賠責保険の請求書を行います。
請求した金額が支払われない場合には、示談交渉を行います。

被害者が泣き寝入りしないために


示談書作成の基本については、基本編でまとめましたが、これらに加えて以下のような内容を記載することにより、被害者に、より有利になるような示談書を作成することができます。

1.期限の利益喪失と遅延損害金の記載
「期限の利益」とは民法で定められている債務者のもつ権利(利益)のことで、一言で言えば「決められた支払期限が来るまでは支払いしなくてもよい」という利益のことをさします。
例えば「5回分割で支払いを行う」という契約をした場合、支払者は突然まとめて請求されることはなく、各回の支払い期限まで支払いを待ってもらうことができます。これが期限の利益です。
示談書で加害者からの支払いを分割払いとした場合は、万が一期限が守られない場合に備え、「1回でも支払いが遅れたら、期限の利益を喪失し、一括で請求できる」旨の一文を入れておくと、分割払いのリスクを軽減することができます。

また、支払期限までに支払いがされないリスクに備え、予め遅延損害金について明記することも重要です。
支払いが期限までにされない場合でも極力損をしないようにするのはもちろん、遅れるリスクを軽減する効果も期待できます。
なお、交通事故の損害賠償金の場合、利率は民事法定利率の5%となります(民法404条)。

2.後遺障害
症状固定後に示談書を作成した場合でも、その後になって後遺障害が発生する可能性はゼロではありません。
万一、示談後に新たな後遺障害が発生した場合に備え、「後遺症発生の場合は別途協議する」旨の条項を入れておくと、いざという時にも安心です。

3.連帯保証人
これは現実にはなかなか難しいかもしれませんが、加害者の親族などで資力がある人がいれば、連帯保証人としてついてもらうのも一手です。加害者本人の誠実な対応が期待できない場合も、加害者に代わって連帯保証人に支払いを行ってもらうことができます。

以上の内容を盛り込んだ示談書を作成すると、次のようになります。
示談書(応用)(クリックするとPDFが表示されます)

「示談成立=損害賠償してもらえる」ではない?


示談書はただ書類に署名押印するだけで契約成立となりますが、だからといって示談書に書かれた内容が100%履行されるかどうかは分かりません。
これは意外と見落とされがちな点なのですが、示談書を作成したり、裁判を起こして勝訴判決を得たりしたとしても、あくまでその内容を履行するかどうかは当事者の「任意」であり、裁判官や警察官が無理やり財布を取り上げてお金をむしり取るなんてことはできないのです。
そのため、日本の法律では、いわゆる差押えのような「強制執行」の制度を設けています。

ただ、この強制執行、実は示談書の紙切れ1枚だけでは申立を行うことはできないことをご存知でしょうか。
示談書をもとに強制執行を行うには、示談書を「公正証書」として作成する必要があるのです。

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公正証書の作成とメリット

「公正証書」と聞くと遺言書などのイメージが強いかもしれませんが、示談書も公正証書として作成することができます。
公正証書の形で示談書を作成しておくと、万が一加害者が示談書で定めた金員を支払わなかった場合、公正証書を作成した公証役場で加害者宛に公正証書謄本を送付してもらった上で公証人から「執行文」と呼ばれる書類を付与してもらえば、それをもって裁判所に差押えの申立を行うことができます。

「執行文」とは簡単に言えば、「その示談書の内容で強制執行することができる旨を証明する書類」です。
他人の財産を差押するというのは非常に重要な問題ですから、当事者だけで話し合った「ただの示談書」では差押えできず、公証人のような高い法律知識を有する第三者の確認が必要、ということですね。

公正証書の作成方法


公正証書は、最寄りの公証役場で作成することができます。
費用は損害賠償額に応じて変わってきますが、仮に賠償額が1000万円の場合でも2万円いかない程度の金額で作成することが可能です。

公証証書は公証人立会のもと作成され、示談書の内容についてもベースの内容は法律の専門家である公証人がおおよそ作成してくれます。そのため、当事者に専門知識がなくても法的に厳密な内容の示談書を作成することができる点も大きなメリットです。

ただし、公正証書の作成は、当事者が公証役場に出向いて作成することが基本です。
したがって、あまりに協力的でない加害者が相手方だと、公正証書の作成が難しくなる可能性があります。

まとめ


示談書は作成するまでも一苦労ですが、作成したあと実際に内容が履行されるまで気が抜けません。
示談書の作成にあたっては、あらかじめさまざまな可能性を検討し、どんな状況になっても被害者が泣き寝入りしないで済むような内容を目指したいところです。

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